近年、アイスランドは好調な観光業を基軸に経済発展を遂げています。外国からの資本規制が段階的に緩和されていることもあり、資金流入が後押しとなり、景気過熱の恐れすらあります。経済指標を一例に取ると、2016年のGDPは7.2%上昇しており、その成長率には目を見張るものがあります。

そんな好景気ともいえるアイスランドですが、2008年には「金融・経済危機」に見舞われました。これは、アメリカのサブプライムローンをきっかけに、国内の金融バブルが崩壊したことが原因ですが、その被害は、あわや国家破綻というところまで追い詰められたのです。

アイスランドを襲った金融・経済危機

金融・経済危機に見舞われる直前のアイスランドの経済は、金融業に傾倒していました。投資マネーを集めるために当時のアイスランドクローナの金利は15%以上にもなっていたのですが、当然そこまで高金利ともなれば、莫大な資金が世界中から集まってきました。しかし、それらの集まった資金の運用先としてアイスランドの銀行が選んだ投資先がサブプライムローンを中心とした商品化証券でした。その結果、リーマンショックの余波をまともに受け、不良債権が膨大化し、通貨暴落を引き起こしてしまいます

膨らんだ不良債権を処理するために、アイスランド政府は非常事態宣言を出し、銀行は国の管理下に置かれることとなりますが、その際の銀行の破綻処理で債務不履行になった日本の円建て債券は総額で780億円もあったといわれています。

周辺諸国からは金融機関の債権に公的資金の投入や厳しい財政緊縮という提案もありましたが、2度にわたる国民投票で否決されています。この背景には、一連の財政破綻の引き金となった莫大な資金の操作は一部の金融界の人間によるものであり、国民にその責任はないという声が強かったことにあるといわれています。

無謀な投資を繰り返していた銀行幹部は逮捕され、銀行は国有化されました。諸外国の反対を押し切り、アイスランド政府は国民を守ることを優先したのです。国民の声が政府の判断に影響を与えたのです。翌年発足した新政権は国民の福祉を守る政策を打ち出し、危機からの脱却へと踏み出していくこととなります。

この事件は結果として、国民の経済や政府に対する考え方を変えるきっかけとなります。何が行われているのかを知るための透明性や国民全員が経済や国の政策に積極的にかかわっていこうという意識の芽生えを促したのです。

自国産業保護とEU非加盟の選択

2015年、アイスランド政府は欧州連合(EU)への加盟交渉を打ち切ったことを発表しました。これは、金融・経済危機以降の国内経済が好調であることと、主に国内産業の保護が判断材料になったといわれています。

2008年当時は危機的状況から脱却を図るためにEU加盟の道を模索していましたが、もともとアイスランドはEU加盟に積極的ではありませんでした。それは、当時のヨーロッパは、漁業関連の規制を進めており、自国の主要産業である漁業への悪影響が強いのではないかという懸念があったからです。

一方で、ヨーロッパ各国はアイスランドで水揚げされる水産物の重要な輸出先でもあり、国内の経済状況にもかかわらず安定的な販売先となっていました。そこで1970年には加盟国間での自由貿易や経済統合の促進を目的とした欧州自由貿易連合(EFTA)に加盟、1994年以降は欧州経済領域(EEA)という、ETFA加盟国であればEUの単一市場に参加することのできる枠組みへのメンバー入りを果たすなど、ヨーロッパ圏での経済活動に積極的に取り組んできました。その結果、アイスランドはEU非加盟国でありながら、ヒト・モノ・カネ・サービスなどの移動が自由となる仕組みを段階的に手にしていったのです。

しかし、2008年の金融危機が状況を一変させます。当時、諸外国から金融資産を集めて運用していたアイスランドは一瞬のうちに膨大な負債を抱えてしまいます。関税の撤廃により食料品価格が抑えられ、ユーロの導入により物価が安定することを期待し、経済の立て直しの一手段として、EU加盟の検討をし始めます。2009年の総選挙ではEUの加盟に前向きな社会民主同盟を中心とする連合政権が発足し、加盟申請を行い、翌年には交渉が進められていくことになります。

しかし、反対派が大多数だったこと、EU経済圏が不調であること、アイスランド経済が順調に復活し始めていたことなどの要因で、2015年に加盟申請を取り下げることとなります。結果として、現在もEU非加盟国ではあるものの、経済を中心とするEUとの協力姿勢には積極的で、ヨーロッパ各国との連携を密に保ちながらも、自国の繁栄を狙うのが、アイスランドの経済戦略となっています。

 

今、再び脚光を浴びる伝統産業

かつては世界を席巻する金融立国という顔を持っていたアイスランドですが、古くから主要産業は漁業や酪農です。北大西洋に位置する豊かな量上では、上質なサケやニシン、タラなどが多く水揚げされており、水産業はGDPの10%ほどを占めています。関連産業を含めれば、国民の7割近くが従事していることとなります。

また、農業は主に羊の酪農で80万頭近くが飼育されています。そうした国内産業は金融・経済危機ではほとんど打撃を受けず、むしろ以前より好調でした。その理由はアイスランドクローナが暴落したことにより、クローナ安となった結果、輸出が増加したためです。これらの国内産業は、現在も重要な税収減となっており、コカの運営を支えています。海外からクレームの入ることも多い漁獲制限や捕鯨については、国内で規制をかけており、持続的に確保できる資源としての配慮が施されています。

近年急成長中の観光産業

2010年には50万人ほどだった観光客は、2017年には230万人にも上ると予測されています。

人工わずか34万人の国に7倍もの観光客が訪れることとなり、外貨収入のうち40%以上が観光業による収入になるという見積もりもあります。

しかし、観光地として象徴的なブルーラグーンや氷の洞窟で知られるヴァトナヨークトル国立公園といったアイスランドならではの景観は魅力的ですが、あまりにも急なペースで観光客が増えているために、観光設備や制度の整備が追い付いていないのが課題です。

豊かな自然環境が売りであるがゆえ、オーバーユースによる環境破壊が問題となっているのです。現在は観光税の導入によるインフラ整備や許可証制度などが検討されているといわれています。

 

最後に

一度は金融業で発展しながらも、金融危機を経て、いま、あえて一次産業に原点回帰をしながらもさらなる発展を迎えているアイスランド。
もともと豊かな資源に恵まれていたこの国は、本来の経済モデルにもどり、順調に発展を遂げているのであると思います。

一方で、順調な経済発展がインフレを生んでいるともいわれている中で、旅行者には訪れずらくなっているのも事実ですので、ほどほどに発展してもらうのありがたいのかもしれませんね。