経済破綻と社会不安をはらんだ混とんとした時代を乗り越えたアイスランド。そのような中で、いま新しい政治の在り方を模索しています。人口わずか34万人という小国がつかんだ変革の兆しを紹介します。

 

2017年1月、中道右派の独立党を中心に改革党と明るい未来党を伴った連立政権が誕生します。2008年の金融・経済危機に続き、追い打ちをかけるように2011年のパナマ文書を発端とするグンロイグソン首相の辞任も国民の政治不信をあおり、長期にわたり政治の不安をもたらしていました。これらの不祥事は国民に“政治の在り方”を考えさせるきっかけとなりました。

腐敗しきった政治の解消に注目が集まり、政党も透明性や体制の改革を打ち出すなど、国民の声に動かされた形ではありますが、クリーンでオープンな政治運営が実現されようとしています。

 

設立わずか4年で急成長を遂げた“海賊党”

一方で、既存政党への反発を後押しに存在感を高めているのが‟海賊党”です。そもそも海賊党とは、スウェーデンで2006年委創立された政党でアイスランドでは2012年に発足。現在、ドイツやスペインをはじめとするヨーロッパ各国のみならず、世界60か国以上で活動しています。既存政党や体制に対抗するカウンター的立ち位置で、市民活動家や無政府主義者、アーティストなどを巻き込み、2013年に行われえた議会選挙では定員数63議席のうち、3議席を獲得し、支持率を伸ばしてきました。

海賊党の政策方針には、オンラインを活用し、国民の声をダイレクトに反映した“液体民主主義(リキッドデモクラシー)”を目指すとあります。液体民主主義とは、国民の声が反映されにくい間接民主主義に、参加者全員で物事を決める直接民主主義の要素を取り入れたものです。国によって権限や参加度合いは異なりますが、政策決定の際に関心があるものには自ら参加し、ほかは信頼する人に任せるというスタイルで、参加に関してはネットを使用します。

対権力の象徴・海賊党は市民の声の受け皿となるか

長年の政治不安が海賊党への支持につながっているのは確かですが、若者たちからの人気の高さはほかの政党にはない特徴です。これまでの政権は連立政権を組みことで新しい政党の政治参加を拒んできたのですが、いわゆるエリート層の不正が世界レベルで取りざたされている今、既存の政治体制へのカウンターとしての立ち位置が若者を中心とした層の受け皿となっているのです。

2016年の選挙時の世論調査では、支持率を42%まで伸ばし、14.5%で10議席を確保しました。その得票率は緑の党に次いで3位、国会議員数では第二党となり、もはや泡沫政党の面影はありません。

ちなみに、海賊党の政策には、NSA内部告発者であるエドワード・スノーデンの亡命を受け入れ、ビットコインの正式認証、インターネット規制の反対といった性格があることも付け加えておきます。ともあれ、連立政権による新政府への信頼、台頭する海賊党に込めた期待など、アイスランドの政治が変革の時を迎えているのは確かです。こっれまで積み重なってきた不安・不信というネガティブな理由ではありますが、社会全体で高まりつつある政治への意識はどこへ向かうのでしょうか。今後のアイスランドの政治には注目したいところです。